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大人の勉強では「記憶のバイアス」には注意しなければならない。大人ならではの間違いとして、間違って覚えたことをそのまま間違ったままにしてしまう、要はわかった「つもり」になっていることがよくある。

英語を読む際も同様である。雑誌を読んでいて知っていると思っている単語ばかり並んでいれば、たぶん解説は読まない。知らない単語が出てきた時にだけ、「あ、これわかんないな」と思って解説まで読む。「知らない」ことを認識している時は、新しく学べるのだが、間違って覚えていることを修正できないというのは、大人の勉強の大きな問題点のひとつである。

スポーツでもよく言われるのだが、たとえばゴルフのスイングの「修正」は無理で、1回アンラーニングしなければいけないと言われる。修正はするな、再構築せよ、である。

このような課題はあるものの、総じて言えば、大人が勉強したほうが絶対に効率がよい。今の仕事と、学生時代にやっていたことのレベル感を比較してみればよい。今のほうが、相当高度なことをやっているはずである。

それを考えたら、英語など朝飯前だ、くらいに思えるのではないか。なぜなら、英語の勉強は決まりを覚えるだけである。英語を使って話すべき内容にクリエィティビティは必要だが、英語そのものには、クリエィティビティのかけらもない。要は、時間をどれだけ効果的に使って取り組むかということだけだ。

大人の勉強にとって最大の障壁は、時間の確保だ。勉強の必要性も理解しているし、やればできることもわかっている。でも、現実問題として時間がない。

私はサラリーマンではないので、従業員の立場の方々よりは多少の時間の融通は利くかもしれないが、一応、業務時間は平日の9～18時と定めているので、さすがにその時間に勉強をするほど余裕はない。

結局、通勤時と夜、土日を充てることになるのだが、会社をやる人間は24時間365日仕事がある。仕事がしたいのだ。さらに、子供とも遊びたいし、ゴルフにも行きたい。たまにはひとりでスーパー銭湯に行って露天風呂に入り、マッサージもしてもらいたい。ベッドに入ったら好きな本を読みたいし、通勤時は音楽を聴いていたいものだ。

これらの誘惑に打ち勝つには、相当な強い決意が必要である。そして、その決意を持続させ、サポートしてくれる優れた教材が必要だ。後で述べるように、私は本コラムのためにTOEIC対策の勉強を行なった。その際に、単語帳と文法集を手に入れたが、正直最後までたどり着くことができなかった。

大きな理由は、飽きてしまうことだ。勉強が仕事である学生ならば、真剣に取り組めるだろうが、「こんな勉強してるんだったら、仕事の本読んだほうがマシだ…」という思いが、頭をよぎりまくるのである。なぜなら、これらに出てくる未知の単語や表現は、私が普段している仕事とほとんど関係のないものばかりだからである。

それに、中学・高校の教科書にも出てこないような瑣末な文法は、英語で仕事をしていてもめったにお目にかからないし、実際の会話では多少の文法の間違いは問題にならない。長文読解も、それを通じて何か知識を得ようとする、あるいは楽しみたいという目的で文章を読むのはよいが、問題を解く「だけ」のために、長い文章を読むのは時間のムダ以外の何ものでもない。結局、単語帳も文法集も最後までたどり着くことはできなかった。

一方で、自分に適した面白い教材には出会うことができた。自分の仕事や興味のある分野に関連した教材に取り組むことが、もっとも効率のよい勉強法である。