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幸いにして、わたしには白人コンプレックスがほとんどない（はずである）。白人コンプレックスがほとんどないということは、有色人を見下すということがほとんどない、ということと同列でなければならない。そして、わたしにはそれがやはり、ほとんど少ないと思っている。

こんな思い込みの人間がほんとうはタチが悪いのか。差別意識の少ない人間のほうが、英語がうまくても差別意識の強い人間より遥かにレベルが高いのはいうまでもない。英語なんかしゃべれなくても、外国人にわけへだてなく、「どう、元気かい？」と声をかける八百屋さんや魚屋さんが偉いのは、そういう理由からである。ＬはこうでＲはこうなんてこと、どうでもよくはないが、どうでもいいのである。

数をたのむのは嫌である。なんだ毛唐が、と排外主義者になるのも嫌である。幕末の欧米使節団にはたして白人コンプレックスはあったのか。あったはずがない。都小平はあんな小さな体で、白人の首脳たちと会っても大人の風格を漂わせていたのだから。