NOVAの過去と現在について
NOVAが東京に進出したのは、86年。まずは渋谷校を開設している。この時期もそれほど、猿橋元NOVA社長の事業への意欲、利益追求の意欲も強く感じられなかった。バブル期の過当競争にもまれて、当社は赤字続き、資金繰りが苦しくて、借金も膨らんだが、バブル企業と比べれば、まだ微々たるものであった。
「その時、大きな原理に気づいたんや」とあるインタビューで猿橋は言った。彼に大きな転機、大きな経営方針の転換があったのである。「会計上、費用を積み上げて考えると絶対にペイしないのです。ペイしない理由はスケールだったのです。スケールが大きくなればペイするのです」と。ここにNOVAの驚くベきスケール拡大路線がはじまり、同時に破産への道になったというわけです。
バブルが崩壊して、他社が次々と倒産する中で「ここからは一刻も早くペイする店舗を確保する、時間との競争を始めました、損益分岐点を突破する店舗数にもっていこうとしました」と猿橋。
不動産が暴落し、労働力が過剰になる中、「駅前留学」といううたい文句で立地条件のよい物件を借り漁り、買い漁る。新卒者や仕事のないダメな外国人講師をどんどん採用し、テレビコマーシャルを駆使した急激な膨張路線を展開、ジオス、イーオンなど他社の開校競争に突入していく。
猿橋元NOVA社長の映像や写真をどうみても景気の長期低迷期にすきまをかいくぐって、倍々ゲームの成長を達成した、儲け至上主義の「猛者企業家タイプ」には見えない。だが、ある時点から企業を維持するために、変身したのである。ジオス、イーオンと同じくそれは周囲の人間を徹底して食い物にしていく「成長戦略」だった。
猿橋は、NOVAの成長の要素について「夢を夢のままで終わらせない、マイナス要因があってもそれをプラス思考で乗り切る精神力」と表現しているが、この年代を生きた企業貨の多くがそのようなセリフを使って若い人たちを騙してきたことも事実である。しかし、この「夢」を実現するために、「ぼったくり商法」とか言われるような、他社や従業員や受講者や講師を犠牲にしてでも儲けを漁る企業家としての姿勢は、彼の自由な青年時代からは予想できない。彼は本当に「夢」を実現したと言えるのだろうか。
猿橋は、NOVAの子会社として広告会社を自ら設立、大々的なテレビコマーシャルの攻勢によって、拡大路線を突っ走ってきた。店頭市場に株式を公開したのも、NOVAの成長に大きな役割を果たしたように見えた。しかし、破綻の芽もまた、膨らんでいた。
さて、現在のNOVAブランドで運営しているジーコム社だが、果たしてどのように考えているのだろうか。どうしてもきな臭い会社であることは当初から感じていた人も多かったようだ。まんまとせしめた教室数は、NOVA470校、ジオス390校はこれから拡大していくのか、それとも縮小していくのか。私には拡大路線では業界に将来がないように思えてしかたない。
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