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TOEICスコアが800点を超えたといっても、英語の運用能力が大幅に上がったという実感はありませんでした。「このスコアは何かの間違いでは？」と、狐につままれたような気持ちになったほどです。実際、私の経験に基づいて言えば、「TOEICで点数が取れること」と「英語を使えること」は必ずしも直接結びついているわけではないと思います。しかしTOEICスコアが、英語に関わる仕事が欲しいという人にとっては、チャンスを広げる強力な武器になることは間違いありません。

「もしこのスコアが偶然の産物だったとしても、せっかく取ったスコアなのだから、絶対に活用したい！」

　そう思った私は、すぐに転職情報誌を買い、TOEIC812点で応募できる仕事を探しました。すると、大手英会話学校が「TOEIC800点以上」という条件で講師を募集していたのです。

採用試験で筆記テストを受けて合格すると、その場で英会話学校のスタッフを相手に模擬授業をするように示されました。この時に役立ったのが、トフルゼミナールでの「ブツブツ反復」。半年間の授業中、先生の話していることを逐一シャドーイングしていた成果で、授業を進める時のコツも同時に覚えていたのでした。

“Hi,how are you?　Today's lesson is:What do you do for a living?”

生徒役のスタッフが「何を聞かれているのかよくわからない」というような困った顔をすると、すかさずその人の前で膝をつき、目線の高さを合わせて”What's　your　job?”と質問を言い換えて対応。模擬授業はスムーズに進み、英語講師の経験がない割には堂に入った教えぶりが評価されたのか、なんと主任講師として採用されることが決まりました。

ちょうどその頃、海外の大学も受験していたのですが、合格したとしても学費を払える目途は立っていませんでした。一方、英会話講師なら、学校の教材などが使い放題で、そのうえお給料までもらえるのですから、当時の私にとっては願ったり叶ったりだったのです。私は進路変更を決め、採用試験の3日後には英会話学校の研修を受けていました。アメリカの大学から合格通知が届いたのは、講師として働き始めた後のことでした。