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最初はカタカナ英語のひどい発音だった人でも、ネイティブに相当近い発音を習得することができるし、発音ができれば、聴き取りも（少なくとも既知の単語に関しては）ほぼ完壁にできるようになる。

ただし、ネイティブに近いレベルになるには、平均的に1年間は要するので、明確な目的がないと絶対に続かない(たった1年、という見方もある)。実際問題として、一般のビジネスパーソンにとっては、“通じる程度に”発音ができ、聴き取れれば十分であると思う。しかし、ネイティブ並みの発音がないと、絶対的に不利な職業というものがある。

典型的な例は、英語教師だろう。英語を教えるなら、やはりパーフェクトな発音ができないと信用されない。あとは、シンガーや、ブロードウェイやハリウッドを目指すような俳優は、せっかくのロマンチックなシーンなのに、カタカナ英語で観衆を夢から覚ましてしまうようではマズい。

また航空会社のCAは、英語の発音が完壁に近いに越したことはない。JALやANAの飛行機に乗って着陸が近づいた時に、奇妙な発音でアナウンスがされると、背中がむずがゆくなってくる。

不思議に思うのは、JRの新幹線のアナウンスは、ネイティブによる録音を使っているのに、なぜか飛行機の到着アナウンスは肉声であることだ。可能性としては、日によって到着ゲートが異なることもあるだろうが、あらかじめ録音されている数字を選べばよい。追加の情報があるなら、そこだけ人間がやればよい。ここは推測であるが、CAの中で英語のアナウンスをするのは、ひとつのステイタスなのではないかと思う。もしそうであれば、なおのことトレーニングをすべきだ。

いずれにしても、完壁な発音を体得することによって得られるビジネス上のメリットは何か、それを具体的にイメージした上で、どの程度を目指し、どのような教材におカネを使うのかを決めるべきであろう。

とはいえ、こと発音に関してだけ言えば、もっと根源的な欲求に立ち戻ってもよいかもしれない。何しろ、英語の音はカッコいい。邦楽ヒット曲のサビの部分は英語が多いし、世の中でカッコいいと見られている職業名は、ミュージシャン、○○プランナー、○○トレーダーなど英語である（表記はカタカナだが)。

英語の歌をカラオケで完壁に歌いたい、職場に英語の電話がかかってきたらパーフェクトな受け答えをしたい、レストランで近くに座った外国人とぺラペラやっているのを友達に見せつけたい、など一見下世話とも取れるようなモチベーションも、実はありなのではないか。

第5章のまとめ
・たとえ文法が完壁でも、発音がひどければビジネスパーソンとして信頼されない。英語学習の要は発音を鍛えることだ。まずはアルファベットと、1から10までの数字の発音を正しく身につけるように訓練する。
・自分の声を録音して聴いてみることが、発音の上達には必須であり、近道である。
・洋楽をカッコよく歌いたい、英語の電話にひるまず応対したい、というような身近な目標も、上達のモチベーションになる。