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私は、アメリカの大人気のシットコム『フレンズ』で楽しみながら英語を身につけました。シットコム（シチュエーション・コメディ）とは、俳優がジョークを言うと、バックに笑い声が入る海外ドラマの事です。この独特のスタイルは、英語を学ぶ上で非常に便利なのです。

なぜなら、笑い声が目印になるから。笑いが起こった瞬間には面白いジョークや気の利いた言い回しが出てきたということなので、そこを集中して聴くと、楽しく自然な英語表現に馴染めます。また、笑いによって会話にメリハリがつき、良い印象が残るのもいいところ。そして何より、面白おかしいストーリーを楽しみながら学べるのが、最大のメリットです。

では、その方法を具体的に紹介しましょう。

まず、『フレンズ』の英語・日本語の音声と字幕の収録されたDVDを用意します。それを3回、別々の方法で観ます。30分番組ですが、一気に1話を見ずに、シーンの切り替わり毎に観る方法が効果的です。

第1段階は「英語音声＆字幕なし」。ネイティブと同じ条件で観て、現時点での実力を知りましょう。もちろん、ネイティブが娯楽として楽しむレベルですから、聴き取れなくても全然OK。落ち込む必要はありません。

第2段階は、「日本語音声＆日本語字幕」。内容を一気に掴みます。ここでは、音声と字幕の違いにも注意してください。字幕と音声の訳し方が違う英文は、多くの情報が含まれているので、第3段階でのさまざまな発見や学習の布石になります。

第3段階は、「英語音声＆英語字幕」。一時停止しながら、分からなかったポイントを確認しましょう。同時にパソコンを立ち上げておき、気に入った表現をメモします。辞書で単語を調べる以外にも、固有名詞を検索することで、アメリカの文化背景の知識も得られます。

この方法で私は、留学を経験せずに英語を身につけました。現在、TOEICスコアは990点満点、英検1級も所得しています。

ただし、この成績はあくまで上達度を確認するための目安です。資格やスコアアップを目的にしたことはありません。これは意外と重要なポイントで、スコアアップを目的にしてしまうと、学生時代のテスト対策のような「勉強」になってしまうからです。

「勉強」という言葉にはどうしてもネガティブイメージがある私にとっては、やる気の維持も難しくなってしまったり、スコアアップのテクニックは上がっても、肝心の英語を話す力は身につかなかったと思います。

英語に限らず、「話す力」をつけるのは、「複数の人が会話している様子を観察すること」が何より大切です。だとすると、シットコムDVDは楽しさと確実性の上で良い方法だと言えます。

こう言うと、「観るだけで話す力がつくの？」という疑問が出てきそうですね。でも、そこは心配ご無用。「観る・聴く」ことこそが、実力の基盤になるからです。

話す力は、自分の中に話すためのフレーズが蓄積されて初めて成立します。まずは、英語を話す機会を増やそうとして格安のフィリピン人オンラインレッスンを試す人がいますが、自分の中にストックがないまま、ただオンラインレッスンを始めても効果的ではないと思います。

英語力が不十分な段階で英語で交わせる話題は限られています。言葉を組み立てるのに精一杯で、相手とのやりとりを楽しめないのが現状ではないでしょうか。

それなら、第三者同士の面白い会話を観察した方が、濃い学習ができます。ドラマには多様な日常会話の他、悩み相談、議論、心温まるやりとりなどが数多く出てきます。その表現を知ることは、英語圏の人々のコミュニケーションのノウハウを得ることにもなるのです。

このインプットが出来て初めて、アウトプットができます。覚えた表現を自分でアレンジしてツイッターでつぶやいたり、ネイティブに話しかけたりすることで、さらに多くの学びを得られるでしょう。

さて、楽しい方法の中にも「やる気ダウン」の瞬間はあります。それは、上達を焦ってしまった時。

字幕なしで理解できるようになるには時間がかかります。1シーズン24話を見終えた頃に、上達が感じられるようになる、といったスローな進み方でしょう。

ですから、ここは気長に構えること。そして「この言い方は前にも出てきた」「前は分からなかった部分が聴き取れた」など、小さな進歩を喜び、エネルギーにしましょう。

「～しなければ」という思いに囚われないことも大事です。「毎日必ずこれだけはやらなければ」と思い込むと、楽しさも半減してしまうもの。「気分が乗った時に進めればOK」という気楽さを持ちましょう。

たとえば、第2段階の「日本語音声＆日本語字幕」しか出来なかった費があったとしても、焦る必要はありません。この段階なしに第3段階での深い理解は不可能ですから、ここも重要な英語学習である。各プロセスに意味があることを心得ておきましょう。

あとはぜひ、とにかくストーリーを楽しんでみてほしいと思います。登場人物に感情移入し、ともに笑いましょう。そうした共感が、リアルで濃い会話を交わすコミュニケーション力の基盤となるのです。